2026-06-02
「勤怠管理はExcelで回しているけど、毎月の集計作業が地味に大変……」そんな声を、中小・スタートアップ企業からよく聞きます。たとえば50名規模の企業でExcel管理を続けた場合、フォーマットのズレや転記ミスの修正も含めると、年間720時間もの工数が発生するケースもあります。
もちろん、それは有力な選択肢のひとつです。しかし市場にある勤怠管理SaaSを調べると、いくつかの問題が見えてきます。まず費用。50名規模で利用すると月額費用はそれなりの金額になり、初期費用・カスタマイズ費用・サポート費用を含めた5年間の総コスト(TCO)は高額になりがちです。さらに、本当に必要な機能はシンプルなのに、SaaSは多機能すぎて社内への定着に時間がかかるケースも少なくありません。
「お金を払って使いづらいシステムを使い続けるより、自社にちょうど良いものを作れないか?」──Village AIでは、その答えとしてClaudeを活用した内製という選択肢をご提案しています。
私たちがご提案するのは、Claude(Anthropic社のAI)を活用して勤怠管理システムを内製するアプローチです。AIを使った開発というと「エンジニアが必要では?」と思われがちですが、専任のIT部門なし・担当1名からでも実現できる点が大きな特徴です。
Claudeに要件を伝えながら、コードを段階的に生成・修正していくスタイルで開発を進めます。「打刻できるUI」「50名分のシフト管理」「月次集計の自動化」といった要件を言語で伝えるだけで、AIが実装の大部分を担います。専門的なプログラミング知識がなくても、業務フローを言語化できれば開発を進められるのがClaudeの強みです。
システムの構成例は以下のとおりです。フロントエンドにNext.js 14とTypeScript、データベースにSupabase、スタイリングにTailwind CSS、ホスティングにVercel、そしてAI機能にClaudeを採用します。いずれもサブスクリプション型で利用でき、初期費用を大幅に抑えられる構成です。
要件定義・DB設計・コンポーネント設計まで、AIとの対話を通じて短期間でMVP(最小限の動くプロダクト)を形にできます。次のセクションでは、その具体的なコスト試算をご覧ください。
「内製化するとコストが下がる」と言葉で言うのは簡単ですが、実際の数字で比較します。50名・社内対応コスト込みで、「既製SaaS導入」「外部ベンダー開発」「Claude活用の内製」の3パターンで5年間TCOを試算しました。
| ✔ Claude活用の内製 | 既製SaaS導入 | 外部ベンダー開発 | |
|---|---|---|---|
| 初期コスト | なし | なし | 5,000,000円 |
| 月額ランニングコスト | 6,975円 / 月 | 41,700円 / 月 | 年間保守費あり |
| 5年間TCO目安 | 1,994,500円 | 3,040,000円 | 9,110,000円 |
| 内製との5年コスト差 | ── 基準 ── | ▲ 1,045,500円 (約34%削減) |
▲ 7,115,500円 (約78%削減) |
※ 50名・社内対応コスト込みで試算。月額ランニングコストはNext.js+Vercel+Supabase+Claude API(従量課金)構成を前提とした試算値で、AIの利用量や機能によって変動します。社員数が増えても内製のコストはほぼ線形に増えません。
※※ なお、セクション4で紹介した実際の開発では、よりシンプルなPython+Flask+SQLite構成を採用しLAN内で運用したため、ランニングコストはさらに低くなっています。上記の試算はあくまでVercel+Supabase構成を前提としたもので、採用する技術スタックや運用環境によって変動します。
外部ベンダーに頼んだ場合と比べると、5年間で約711万円の差。既製SaaSと比べても約105万円の削減になります。内製のランニングコストは月額わずか6,975円(Claude API(従量課金)利用料+Vercel+Supabaseの合計)で、一般的な業務SaaSの料金体系とは大きく異なります。
「でも開発工数がかかるんじゃないか?」という疑問はもっともです。次のセクションで、実際にどれくらいの時間で・どんな手順で作ったのかをお伝えします。
「本当に作れるのか?」という疑問に答えるべく、私たちが実際にClaudeを使って勤怠管理システムを作りました。担当者は開発経験こそあるものの、自分でコードを書くわけではありません。専任のエンジニアもいません。そのリアルな記録です。
最初にやったのは、コードを書くことではありません。Claudeのプランモードで要件を壁打ちしながら、実装プランを作ることでした。「建設業向け」「担当1名」「小規模(30名・現場5件以下)」という条件を伝えると、技術構成・ディレクトリ構造・データベース設計・開発フェーズの順序まで、詳細なプランが提示されました。
プランを微調整した後は、Claudeの指示に従いながら実装を進めました。人間が手を動かしたのは、ライブラリのインストール・サーバーの起動・動作確認・エラー発生時の調査(Claudeと一緒に対応)・Claude APIキーの取得、これだけです。コードそのものはほぼClaudeが生成しました。
開発は環境構築・認証・打刻UI・承認フロー・台帳管理・36協定アラート・レポート・AI連携・デプロイの9フェーズで構成されました。プランニング開始15:00から全フェーズ完了17:15まで、トータル約2時間15分。うち実装フェーズ(Phase 0〜8)は1時間25分で完了しています(本記事ではこの実装フェーズを指して「約1時間半」と表記しています)。
「動くものができた」は事実ですが、「すぐに実務で使えるか」は別の話です。セキュリティの検証、エッジケースへの対応、長期運用での安定性など、品質担保のプロセスは別途必要です。今回の取り組みはあくまで「コードを自分で書かずに、1時間半で動くプロトタイプを作れる」という実証です。
なお、今回のシステムの月額ランニングコストは、LAN内運用のためホスティング費用ゼロ、アプリに組み込んだClaude API(従量課金)の利用料約500円のみです(AIサマリー機能を月数回程度使用した場合の実測値)。仮に外部公開する場合でも、サーバー費用を加えて前述の試算(6,975円/月)を大幅に下回る水準に収まる見込みです。また、今回の開発作業にはClaude Pro($20/月・約3,000円・定額サブスクリプション)を別途利用しています。ランニングコストとは別の費用としてご認識ください。
コスト削減だけが内製化のメリットではありません。システム導入によって、日々の業務効率にも大きな改善が見込めます。
毎月発生しているExcel集計作業が自動化されることで、年間720時間分の手作業が不要になります。担当者がその時間を本来の業務に充てられるようになるのは、数字には表れにくいですが大きな効果です。
打刻・申請・確認のプロセスがシステム化されることで、メンバー1人あたり1日20分の操作時間短縮が期待できます。50名×20分×稼働日数で換算すると、組織全体では年間で無視できない規模の時間が積み上がります。
Excelではどうしても「月末に集計して確認」というサイクルになりがちです。データベース管理に移行することで、管理者はリアルタイムに勤怠状況を把握でき、有給残日数・残業アラートなども即座に確認できるようになります。
今回の試算と実証からわかったことを3点にまとめます。
IT部門が不要で、専業エンジニアでなくてもAIの力を借りれば業務システムの開発・運用が可能です。実際に1時間半で6機能のプロトタイプが完成しました。「社内にエンジニアがいない」という企業でも、Claudeを活用した内製は十分に現実的な選択肢です。
前述のコスト試算のとおり、月額6,975円という低コストで運用でき、5年間では既製SaaS比・外部ベンダー比ともに大幅な削減が見込めます。スタートアップや中小企業にとって、この差は経営に直結します。
内製の最大の利点は、自社に必要な機能だけを作れることです。一方で、動くプロトタイプを実務レベルに引き上げるには、セキュリティ検証・運用設計・品質担保のプロセスを別途設計する必要があります。「作る」ハードルが下がった分、「育てる」プロセスをどう設計するかが、内製化を成功させる鍵です。
「うちにはエンジニアがいないから無理」「SaaSを使うしかない」──そう思われていた方に、Claudeを活用した内製という選択肢が一つの可能性を示せれば幸いです。内製化の具体的な進め方や、品質担保の方法についてはお気軽にご相談ください。