オープンデータで地方の分析をしてみた その2

2025-09-25

前回の記事:『オープンデータで地方の分析をしてみた その1』
https://www.villageai.jp/2025/09/05/blog-20250908

要因分析つづき

前回は人流が増加している日付の特定と、ネットの検索を行うことにより、日田市の人流のピークが、オートポリスで開催されているモータースポーツイベントの集客によるものではないかという仮説が浮かび上がった。
今回はさらなる検証のためにRESAS(※)にてオートポリス内の滞留人口を確認していく。

※内閣府が提供する地域経済分析システム

・RESAS https://resas.go.jp/
・観光マップ>観光地分析で、オートポリス上のメッシュを選択し、グラフを表示させる。現在滞留人口を確認できるのは2024年のデータのみ。


オートポリスに重なるメッシュを選択し、グラフを表示させたところ、以下の結果が得られた。


グラフからはほぼすべての年代層の、特に男性客を県外から誘致できていることが確認できる。


デジタル観光統計の人流と、RESASの滞留人口はカウント方法が異なるため、実数に差異が生じると思われるものの、5月、10月ともに35000人近くとなっており、日田市内の人流とピークが一致する。オートポリスの観客がそのまま日田市の人流としてカウントされ、ピークに繋がっていると考えて間違いなさそうである。

また、7月や9月においても、オートポリスでのイベントが、日田市の人流に与えている影響が大きそうであることが確認できた。上記グラフの通り、オートポリス内の滞留人口も7月、9月は10000人前後となっている。

2024/1/1~2024/12/1の日別宿泊者数と人流データのグラフ

日付に該当するオートポリスでのイベント

・スーパー耐久シリーズ 2024 第3戦 7月27日(土)~28日(日)
https://toyotagazooracing.com/jp/supertaikyu/calendar/2024/

・2024 MFJ全日本ロードレース選手権シリーズ 第6戦 9月7日(土)~8日(日)
https://www.mfj.or.jp/national/2024-rd-all-japan/rd6-kyushu/

なぜ宿泊客数が伸びないのか

特に10月のSUPER GTでは日田市最大の集客を得ているにもかかわらず、宿泊客数が他の月と比べてもそこまで伸びていない。その要因には、開催地であるオートポリスの位置が関係していると考えられる。オートポリスは熊本県との県境に位置しており、日田ICから車で約60分と、市街地からはかなり離れた場所にある。熊本県の南小国町や阿蘇市、菊池市の方が距離としては近いため、宿泊先が市外に分散してしまっている可能性が高い。

試しにオートポリスからおよそ車で30分の南小国町の宿泊客の属性について、観光予報プラットフォームで前後の期間を含め確認を行った。

すると南小国町の宿泊客のうち2024年9~11月の3カ月の期間でほぼ女性客が男性客を上回っているのに対し、SUPER GT Round7決勝の期間に該当する10月19日ピンポイントでは逆転が起こっていた。

観客の6割以上を男性が占めるオートポリスにおいて(※上記RESASのグラフを参照)、SUPER GT観戦目的の宿泊客が存在することを示唆していると考えられる。

まとめ

以上により日田市内への人流(訪問客数)に対して宿泊客が伸び悩む要因の一部をオープンデータにより明らかにすることができた。

オートポリスへの集客を、日田市への観光誘致に繋げることができればさらなる経済波及効果が期待できるはずである。日田市は宿泊率の増加に向けて、すでに以下のような様々な取り組みを行っている。

●スポーツ合宿向け助成金制度
⚪︎https://www.oita-sporttourism.jp/support/

奥日田エリアのアクティビティの紹介と「OKUHITA FAN FUN PASSPORT」キャンペーン
⚪︎https://okuhita.jp/enjoy
⚪︎奥日田エリアでは、津江三山ハイキング、渓流釣り、パックラフトでの川下り、自転車(ロードバイク、MTB、eバイク)など、多種多様なアウトドアアクティビティが提供されている 。特に自転車は、6つのルートが紹介されており、電動アシスト付きレンタサイクルやシェアサイクル「COGICOGI」も導入されている 。また、「OKUHITA FAN FUN PASSPORT」キャンペーンが2025年7月18日~12月31日まで開催され、参加施設での特典提供を通じて周遊と滞在の促進を行っている 。

進撃の巨人の聖地スポットの設置と、スタンプラリーによる周回の促進
⚪︎https://shingeki-hita.com/guidance/sr/index.html
⚪︎「進撃の日田プロジェクト」は、漫画『進撃の巨人』の作者である諫山創氏の「自分が『進撃の巨人』を作るに至ったこの町に、何か恩返しができないか」という強い想いから、日田市民の有志が中心となって令和2年11月に始動したプロジェクト。作品の世界観を具現化し、ファンが作品の舞台を「体験」できるような多様な聖地巡礼コンテンツを創出している。

2024年全日本スーパーフォーミュラ・ライツ選手権における進撃の巨人とのコラボ
⚪︎https://superformula.net/sf/media/2024relese/2024.05.08.pdf

「オープンデータで地方分析をしてみた その1」の冒頭で引用したように、日田市は積極的に観光復興計画や実績を公表している。さらなる施策や今後の成果に注目したい。