2026-05-29
今回、Village AIでは初めての試みとして「もくもく会」を開催しました。各自が黙々と作業を進める場というより、途中参加や途中退出も自由な、緩やかな集まりです。都合に合わせて出入りできる形で始まりました。
目的はシンプルです。Claude CodeやCodexなどのAIツールをそれぞれどう使っているかを共有し、使えるところは積極的に盗んでいくことでした。エンジニアも、デザイナーも、ビジネスサイドのメンバーも一緒に集まり、自分たちの実践を持ち寄りました。
この記事では、その場で出てきた実践的なノウハウをまとめます。
AIツールを使い始めると、多くの人が最初にぶつかる壁があります。それは、あっという間に使用量の上限に達してしまうことです。この会でも、この話題には共感の声が集まりました。
Claude Codeの月額プランには、使用量上限があります。あるメンバーは「1週間分の上限が2日ほどで終わってしまう」と話していました。デザイン作業でAIと集中的に壁打ちを繰り返すと、特に消費が激しいようです。また、「最強のモデルを使えば最強のアウトプットが出るはず」と考えて最上位モデルをフルパワーで動かし続け、すぐに上限に達したという体験談も共有されました。
この課題への答えとして共有されたのが、用途によってモデルを使い分ける考え方です。じっくり考えさせたいプランニングでは高性能なモデルを使い、実際の作業を進める実行フェーズでは軽めのモデルに切り替えます。この組み合わせにすることで、品質を保ちながらトークンの消費を抑えられます。
なお、ProプランやMaxプランでは利用枠の範囲内でClaude Codeを使えます。うまく使い分ければ、一日中複数の作業を並行しても持つケースがあるとのことです。どのモデルをどの場面で使うかを意識するだけで、使い勝手は大きく変わります。
「最初の指示をどう書くか」は、AIツールを使いこなすうえで誰もが試行錯誤しているテーマです。この場でも、参加者それぞれの工夫が次々と共有されました。
あるメンバーは、5W3H(いつ・どこで・誰が・何を・なぜ・どのように・どのくらい・いくらで)を意識し、やりたいことを箇条書きで提示するスタイルを実践しています。AIへの入力が具体的であるほど、返ってくるアウトプットの質も上がるという実感があるそうです。
「やりたいことはぼんやりあるが、必要な条件が整理できていない」というときは、先にAIと対話しながら条件を洗い出し、ある程度まとまってからプランモードに切り替えるやり方が好評でした。最初からプランモードに投げるより、段階を踏んだほうが期待に近いプランが返ってくるという声もありました。
なお、プランモード自体のトークン消費は意外に少なく、むしろ「実装してみる→失敗してやり直す」というループを減らせるため、トータルではトークン節約につながるケースが多いです。ただし複数のエージェントを並行して走らせる場合は消費が一気に増えるので、その点だけ意識しておくとよさそうです。
一方で、「指示の書き方に正解はない。好きな使い方を見つければいい」という声もありました。ここで共有されたノウハウはあくまでヒントです。自分のスタイルを探りながら、少しずつ精度を上げていくプロセスそのものを楽しむことが、長く使い続ける秘訣かもしれません。
会の中でひときわ盛り上がったのが、「AIが太鼓持ちになる問題」についての話でした。
AIは褒めたり肯定したりするのが得意な反面、何を提案しても「いいですね!」「素晴らしいです!」と持ち上げがちです。これでは本当の意味での壁打ちになりません。そう感じたあるメンバーが試したのが、「対等に話してほしい。『最高です』みたいな褒め言葉はいらない」とAIに直接伝える方法でした。
すると、AIの態度が一変し、率直な批評や改善点を指摘してくれるようになったといいます。ただし、口調がきつくなりすぎた場面もあり、「もう少し柔らかく」と追加調整したそうです。このやりとり自体が、AIとの対話の本質をよく表しています。
さらに発展した使い方として、「レビュアーとして定義する」というアプローチも紹介されました。AIに対して「あなたは批評家です。私の提案の穴を見つけてください」と役割を与えると、同じ内容でもまったく異なる視点から意見が返ってきます。褒めてくれる相手ではなく、鋭く問いを立ててくれる相手として使うことで、思考の質が格段に上がるという実感があるとのことでした。
また、「CLAUDE.mdやメモリ機能に肯定的なやりとりばかりが残っていくと、太鼓持ちのパターンが強化されているのかもしれない」という鋭い指摘もありました。AIは設定ファイルやメモリ機能を通じて過去の文脈を参照することがあるため、肯定的な会話ばかり続けると、それが”正しいスタイル”として定着してしまう可能性があります。意識的にフィードバックを求める習慣が重要です。
Claude Codeでは、CLAUDE.mdなどのカスタム設定ファイルに口調やキャラクターの指示を書き込めます。「フレンドリーに」「実用的に」「批判的に」など、用途に合わせて切り替えられる仕組みを整えておくと、毎回プロンプトで調整する手間が省けます。チームに展開するときのベースラインとして設定しておくのもよさそうです。
Village AIのメンバーが使っているAI開発ツールは、現在大きくClaude CodeとCodexに分かれています。もくもく会では「どっちを使ってるの?」という話が自然に生まれ、それぞれの使い心地や特性について意見が交わされました。
Claude Codeを使っているメンバーが多数派でしたが、Codexを使っているメンバー、あるいは両方を使いこなす「二刀流」のメンバーもいました。CLAUDE.mdとAGENTS.mdといった設定ファイルを工夫すれば、ClaudeとCodexで共通の指示を流用できるなど、ツール間の互換性を意識した使い方も話題になりました。
AnthropicとOpenAIのAIに対する設計思想の違いも話題に上がりました。Anthropic(Claude)は論理的で堅実、不適切な要求にはっきりNOと言えるAIというイメージです。一方、OpenAI(Codex)は万能でアグレッシブなイノベーターというイメージで、BtoB用途にはAnthropicが向いているという意見もありました。どちらが優れているというより、用途や状況に応じて使い分けるのがベストという結論です。
デザイン担当のメンバーからは、別の視点での活用事例も共有されました。Googleのデザインガイドラインをベースに、Village AI独自のCIガイドラインをHTML形式で作成中とのことです。このHTMLをClaudeに読み込ませることで、ブランドカラーやコンポーネントのルールを守ったLP・Webサイト制作に活かす構想でした。現在7割ほど完成しており、仕上がり次第でサイトリニューアルもClaudeと進めていく予定とのことでした。
「ツールが何であれ、最終的には道具でしかない」という言葉が印象に残りました。大切なのは、どのツールを選ぶかよりも、自分たちの目的に合わせてどう使いこなすかです。その問いを持ち続けることが重要だと感じさせられます。
会の後半では、より本質的なテーマが浮かび上がりました。「AIに何かをさせる」前に、そもそも仕事の流れをきちんと整理できているかという問いです。
たとえばメール対応を自動化したい場合、AIに「メールに返信して」と丸投げするのではなく、「受信する→内容を把握する→返答が必要か判断する→文章を作成する→送信する」という順番に分解することが出発点になります。この各ステップを「パーツ」として定義し、それぞれをAIに処理させていく。これがワークフロー設計の考え方です。
この考え方は、エンジニアにとって馴染み深い「モジュール設計」と本質的に同じです。特定のプログラミング言語で書いていたものが、自然言語に変わっただけです。AIを使って何かを実現しようとするとき、処理をひとつの塊にまとめて丸投げするより、パーツに分けて順番に処理させるほうが精度も上がり、トラブルが起きたときの原因特定もしやすくなります。
「物事の整理がちゃんとできていますか?」。これがAI活用の入り口として最も重要な問いかもしれません。ツールの使い方を覚える前に、自分たちの仕事の流れを言語化する力を磨くこと。それがAIを本当の意味で使いこなす第一歩だという気づきで、今回のもくもく会は締めくくられました。
次回も、みんなで盗み合いながら、少しずつ前に進んでいきます!