2025-09-05
1.
はじめに
2.
大分県日田市の地域復興に対する取り組み
3.
観光予報プラットフォームを利用した観光動態の把握
4.
要因分析
日本は現在、少子高齢化の進行と物価高による国内消費額の減少という構造的な課題に直面しており、特に地方において経済成長の新たな原動力として訪日外国人旅行者の消費支出が極めて重要な要素となっている。
今回は観光客の誘致について積極的な取り組みを行い、近年観光客数を伸ばしている大分県日田市を例に、現状と課題についてオープンデータから分析を行った。
大分県日田市は、観光振興を地域経済活性化の重要な柱と位置付け、2023年度から2027年度を計画期間とする「日田市観光振興基本計画」を策定。「観光地経営」の視点に立った観光地域づくりを推進し、観光消費の拡大と観光をきっかけとした地域経済の活性化を目指すことを目的として、以下のような観光客誘致のための様々な取り組みを行っている。
基本方針 | 主要取り組み(具体例) |
---|---|
地域資源を活かした観光コンテンツの磨き上げ | 自然・体験型コンテンツの活用、歴史・文化資源の継承、人気アニメ「進撃の巨人」との連携による新たなコンテンツ創出 |
ポストコロナ時代を見据えた新たな観光の魅力づくり | 「進撃の巨人」プロジェクト、健康志向メニュー開発、季節ごとのイベント連携によるリピーター獲得 |
戦略的な誘客と効果的な情報発信 | 主要イベントを通じた国内誘客、国際イベント(ツール・ド・九州、大阪・関西万博)との連携、デジタル技術を活用したプロモーション、海外メディア招請、東アジア・東南アジアへのプロモーション強化 |
安全・安心なおもてなし環境の整備 | 観光案内所の機能充実、多言語対応の推進、市内周遊バス・レンタサイクルの整備、AI乗合タクシー実証実験、JR九州・日本航空等との連携によるアクセス改善 |
多様な関係者の連携による持続可能な観光地域づくり | 日田市観光戦略会議の運営、観光地域づくり候補法人(候補DMO)登録、広域連携(豊後未来ビジョン)、地域連携DMO「ツーリズムおおいた」との連携、SDGs理念との連動 |
出典:日田市観光振興基本計画 より
最新の日田市観光動態調査報告書によると、令和6年の市内の宿泊者数は前年比2.6%増(国内宿泊客数4.2%減、外国人宿泊客数31.3%増)とある。
日帰り客を含めると、コロナ禍の落ち込みから大きく回復をしているようだが、課題として別府市や由布市の周辺地域と比べて日帰り客の割合が多いことが挙げられていた。
日田市観光動態調査報告書5ページより引用
観光予報プラットフォームでは、地域と期間を指定することで、その地域内の宿泊者数のおおよその数と、人流(来訪者数)を把握することができる。(※)日田市の2024年の月ごとの宿泊者数と、人流を重ねて見ると、それぞれのピークが大きくずれていることが分かる。
※実数を把握するには有料会員登録が必要。
人流データの出典:
https://www.nihon-kankou.or.jp/home/jigyou/research/d-toukei/
※人流は国内旅行者に限定されるため、宿泊者数の表示も国内宿泊客数に限定して表示をしている。
通常宿泊者数と来訪者数(人流)にはそれなりの相関が見られるはずだが、ここまで差が生じるのには何かしらの理由があるはずである。5月・10月に顕著に人流が増えている要因を特定し、その理由について考察したい。
宿泊客数のピークと人流のピークになぜここまでのずれが生じるのか。まず、観光予報プラットフォームで人流のピークとなっている2024年5月と10月の日ごとの人流データを確認し、特に人流が大幅に増加している日程の特定を行った。
それぞれ、5月19日、10月20日がピークであることが分かる。メモリが自動調整されてしまうので分かりずらいが、5月のピークが30000人弱、10月のピークが40000人程度で10月20日のタイミングの方がより人流が多いことが分かる。5月の前半にある山がゴールデンウィークに合わせた観光客の人流と考えられるが、そのピークが15000人程度であることから比較をしても、かなりの集客数であることが把握できる。
前日から人流が増加していることから、2024年5月18日(土)・19日(日)、2024年10月19日(土)・20日(日)で開催されている大分県内のイベントを検索ところ、日田市内にあるオートポリスで開催された以下のモータースポーツイベントが該当していた。
2024年全日本スーパーフォーミュラ・ライツ選手権 第4-6戦 5月18日(土)~19日(日)
https://superformula.net/sf/media/2024relese/2024.05.08.pdf
2024 SUPER GT Round7決勝 10月19日(土)~20日(日)
https://www.as-web.jp/supergt/1140723?all
SUPER GTに関する記事には2019年の毎戦平均は48,638人、総観客動員389,110人とあり、オートポリスのモータースポーツイベントに大きな集客力があることは間違いない。
世界を代表する多彩なGTカー40台以上がバトル!SUPER GTはアジアで人気を誇るモータースポーツ
https://toyotagazooracing.com/jp/supergt/about/2023/
その他大分県の観光情報サイトでは、該当する日付に開催されている大きなイベントなどはヒットしなかった。
大分県観光情報公式サイト
https://www.visit-oita.jp/
果たして本当にそれだけの人流がオートポリスに集結しているのか?
次回は「内閣府が提供する地域経済分析システム・RESAS」を利用し、オートポリス場内の滞留人口を確認する。お楽しみに!